脱モラトリアム奮闘記

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【本紹介】世の中に巣くう「普通」のおぞましさを暴いた芥川賞受賞作「コンビニ人間」

第155回 芥川賞受賞作】コンビニ人間 | 村田 沙耶香 |本 | 通販 | Amazon

こんにちは、モラトリアム人間です。今回は私が今まで読んできた小説の中で最も衝撃を受けた小説「コンビニ人間」について紹介しようと思います。

 

 

こんな人におすすめ

  • フリーターや独身の方
  • 現代社会に生きづらさを感じている方
  • 小説を読むのが苦手な方(168ページと短いうえにサクサク読めます)

 

目次

 

 

 

 

1.あらすじ

36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。

日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、

「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。

 

「いらっしゃいませー!!」

お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。

 

ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、

そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。

 

 

 主人公古倉恵子はあらすじ以上にヤバい人間です。そのヤバさを一言例えるならば、ロボット三原則*1により律せられたロボット」、目的のためならば非人道的手段も取りかねない思想を持ちつつも、人間の命令には忠実に従う感じの人です。コンビニでバイトを始めてからはオーナーをコンビニと認識するようになり、行動の判断軸をコンビニに置くようになっています。

 

一方で白羽もヤバい人間です。彼は自分の身に理不尽が降りかかる度に「縄文時代の狩猟生活」を引き合いに出し滅茶苦茶なロジックを展開してきます(私は原始人理論厨と勝手に呼んでます)。

 

 本書の物語はそんな、世間からは「異物」認定されている二人が偶然にも利害が一致して、同居生活を始めるところから展開していきます。

 

2.この本の見どころ

 

2-1.奇想天外な主人公視点で描かれている。

 

 本書は全て主人公の一人称視点で描かれています。これが非常に独特で「客が入ってくるチャイムの音」、「かごに物を入れる音」、「店内を歩き回るヒールの音」などコンビニの音を事細かにキャッチしており、それらの情報をもとにコンビニで起こっていることを認識しています。

その一方で妹の赤ん坊と動物の違いが分からない、食べ物を栄養摂取のための「餌」としてしか捉えてなかったりと無機質な描写も描かれています。当時この本を初めて読んだ私はこのような認識の解像度の差に驚かされました。

 2-2.人間社会の普通を身近なコンビニで対比することでおぞましいものにしている。

 

 本書は、コンビニを人間社会の縮図として描いている描写が数多く散見されます。

分かりやすい例を挙げると、とある学校に素行不良の学生がいたとします。学校側はその学生を「問題」として捉え、あれこれ指導することで学校の修正を試みます。

 

 これと同様に、コンビニの世界では怒鳴り散らす客や無断欠勤を繰り返すバイトの店員がいたら、それらを「問題」として認識し、なだめたり解雇したりすることで修正を試みます。

 このように本書では複雑な人間社会をシンプルなコンビニに置き換えることで私たちの日常に潜む「普通」を生々しく暴いていきます。

 

3.この本の3つの考察ポイント

本書をより楽しく読んで頂くため、3つの考察ポイントを以下に挙げました。参考にして頂ければ幸いです。

 

・主人公は何故コンビニに長く居続けられるのか?

 

・主人公と白羽は世間からは同じ「異物」として認識されているが、2人を「同じ異物」としてかこつけてしまって良いのか?

 

・そもそも何故人間社会は「異物」を見つけたら、排除しようとするのか?

 

(※これらのポイントに対する私の見解は後日ネタバレありの「書評」として記事にします。)

追記

 

moratorium040.hatenablog.com

 

 

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*1:ロボット三原則

第一条  ロボットは人間に危害を加えてはならない。また何も手を下さずに人間が危害を受けるのを黙視していてはならない。
第二条  ロボットは人間の命令に従わなくてはならない。ただし第一条に反する命令はこの限りではない。
第三条  ロボットは自らの存在を護らなくてはならない。ただしそれは第一条,第二条に違反しない場合に限る。

アイザック・アシモフ著「わたしはロボット」創元SF文庫より 原題 I,Robot 1940年